関東土質試験協同組合
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第9回岩石試験を知ろう!(岩石のスレーキング試験① )

お久しぶりです!!土質試験課の令和です。羽田技術部長から六郷課長他担当の「岩石試験を知ろう!!」の第9回の案内係を仰せつかりました。皆さん!!第8回目の「岩石の弾性波速度計測」は、どうでしたでしょうか? なかなか難しそうでしたね。それでは、第9回「岩石のスレーキング試験❶」について六郷課長・山王係長、にわかりやすく教えてもらいましょう!! 蒲田さんも私と一緒に勉強するのよ!!


写真-1鍋立山掘削完了式典
(西松建設資料★1

皆さん!! では、「岩石のスレーキング試験」に関する説明をしましょう!ただし、岩石のスレーキング試験に関しては種類が色々あることから、2回に分けて紹介することにしますね!今回は、第一弾として、主に地盤工学会の試験法について紹介させてもらいます。その前段階として、「軟岩の工学的な特性」について簡単に確認しましょう。
 軟岩特有の工学的性質としては、例えば、トンネル掘削等で遭遇する問題として以下の内容が挙げられます。
❶スクイージングこの現象は、地山の強度に対して、応力状態が大きくなると、地山が塑性化し、トンネル内空側に「地山が押し出す現象」が発生します。この現象をスクイージングと呼んでおり、膨張性地山の代表である「鍋立山」のトンネル難工事例(★2)などが有名です。ここで、「鍋立山(なべたちやま)」トンネルとは、北越北線のほぼ中央に位置する新潟県十日町市松代町から大島村までの全長約9116mの単線の鉄道トンネルです。〈皆さん!松代町(まつだいまち)は、星峠の棚田などで知られていますよ!!>
  トンネル工事は、昭和48年12月に着手したものの、昭和57年3月に工事が凍結され、いったん中止となりましたが、北越北線建設の第三セクター化に伴い、昭和60年8月より工事が再開されました。この掘削出来ていなかった645m区間は、「断層と複雑な褶曲運動及び高圧のメタンガス」等で超膨張性の巨大な地圧と高圧のメタンガスとにより、切羽が自立せず巨大な押出し圧により、掘削が難渋しました。最終的には、地山注入工法を採用しその区間を掘削し、無事開通させたようですが、20年間にわたり膨張圧との闘いが強いられた難工事として良く知られているトンネルです。
  鍋立山(なべたちやま)における「難工事区間」では、地山強度比が2以下の粘性土や破砕岩で地すべり地山を含み、蛇紋岩、膨張性泥岩・凝灰岩(膨張性粘土鉱物としてNa型スメクタイトを含有する)、温泉余土、断層破砕帯などから構成されており、これらが複合して巨大な膨張性地圧が発生したものと推測されます。なお、地山強度比(GN)は、塑性地圧を推測する指標で、トンネルの支保パターンを決める地山区分に取り込まれています。GN=地山の一軸圧縮強さ/土被り圧で求めることができ、地山強度比が2以下であると「塑性地圧が生じることが多く」、10以上だと軟岩が良好に自立するとされています。
❷スウェリング:地山が膨張性粘土鉱物を含有している場合に、地下水が十分に供給される状況では、粘土鉱物が水分を吸水して膨張が進行する現象のことをスウェリングと呼んでいます。トンネルの場合には、路盤部が膨れあがることになりやすい現象ではないでしょうか!
 


写真-2 泥岩地山のスレーキング現象(★3
スウェリングによる「地山の強度低下」とは、地山のせん断破壊面付近で、含水率が増加し、局所的なスウェリング現象が発生し、それにより「軟弱化」が進行することで、地山全体が強度低下を誘発するものと考えられます。
❸スレーキングスレーキングのメカニズムとしては、一般的に、以下の2種類の考え方が知られています。
 *:通常、「乾燥、吸水が繰返される」ことで、微細なクラックが発生し、それらの発生が増加して破壊作用が進行する現象を指します。
:その他には、乾燥した状態で水が微細なクラックや間隙に侵入すると、毛細管の作用により水が内部に引き込まれ、間隙中の空気が圧縮され、空気圧が上昇して、破壊現象につながるものと考えるメカニズムです。

 一般的に、スレーキング現象を発生させる岩石は、新第三紀から第四紀の堆積岩で、特に、「泥岩、凝灰岩」が顕著であると言われています。この様な材料を、盛土材料等に使用する場合には、十分な対策を施さなければ「強度低下、圧縮沈下」などを誘発させる原因となりやすいので、施工時の対策を良く検討することが肝要と判断されますね!!  それでは、「岩石のスレーキング試験方法」について、まず、どのような試験方法が存在しているか確認しましょう! 山王係長!!どうですか!簡単に紹介をお願いします!!

 Sure! I proceed based on your request.However, I apologize for only being able to explain within my knowledge.
  Could you tell me as much as you know about the present situation, even if it‘s not much?
   それでは、私から簡単に説明させていただきます! スレーキング現象に係る試験方法としては、地盤工学会の「岩石のスレーキング試験」、「岩石の促進スレーキング試験」の他、土木学会の「浸水崩壊試験」(軟岩の調査・試験の指針(案))があります。この程度なら私でもわかりますが、古い試験法は知りません!

大変結構です。なお、地盤工学会の2つの基準(★4)の役割としては、次のように考えられています。
  軟岩のスレーキング試験は、「乾燥と水浸」の繰返しにより行われますが、この繰返しが1回である場合と、複数回数の繰返しを設ける場合とに区別されます。「乾燥・水浸」が1回の場合は、急速スレーキング現象やスレーキング指数及び対象岩石の「スレーキングに関する基本的な特性」を把握することが目的で、「乾燥・水浸」が複数回の場合は、スレーキングの指数の変化、すなわち、繰返しに対する耐久性を知ることが目的となっていると考えられます。
 その他には、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構(旧日本鉄道建設公団と運輸施設整備事業団)の「浸水崩壊度試験」及びNEXCO(旧道路公団)の「岩の乾湿繰返し吸水率試験(JHS111-1992 )」や「岩のスレーキング率試験(JHS110 -1992 )」が、さらに、脆性岩材料の破砕性を調べる試験方法としては、「岩の破砕率試験(JHS 109-1992)」などの試験方法もありますね!
 それでは、まず、「岩石のスレーキング試験方法(JGS-2124-2020)」(★4)について、試験法の手順を説明させてもらいます。山王係長!説明お願いします!

では、私の方から簡単に説明します。
❶供試体の形状および寸法:供試体は、50㎜×50㎜×20㎜程度の直方体状、又は直径50㎜×厚さ20㎜程度の円柱状、あるいはこれらと同体積程度の「不定形」も選定できます。ただし、「不定形」供試体の場合には、「鋭角な稜角部を有しない」こととします。
❷供試体の作製:供試体は、岩塊試料あるいはボーリングコア試料から、ハンマー、カッターなどを使用して「含水比を変化させない」ようにして作製することが重要です。


写真-3 浸水5時間経過後の状況(★5
❸試験方法
  • a)初期の供試体質量の測定:作製した供試体を試験容器に入れ、全質量m1を測定します。その時には、供試体に付着している岩屑等はきれいに除去してください。
  • b)乾燥:乾燥は、24時間以上「風乾」させた後、(40±5)℃で48時間炉乾燥させます。
  • c)水浸前の供試体の質量の測定:b)の供試体を含水比が変化しないように室温まで冷ました後、試験容器ごと全質量m2を測定します。
  • d)水浸前の供試体の観察:水浸前の供試体について、形状、色調、層理、葉理などが確認できるように写真撮影・スケッチ観察を行います。
  • e)水浸:水面が供試体の最上部より10㎜程度上方となるように、試験容器に水をゆっくり注ぎます。なお、水浸中及び水浸後は、スレーキング状況の観察が終了するまで試験容器は「静置」しておきます。
  • f)スレーキング状況の観察:水浸によって生じる「供試体の形状変化」を、水浸直後、30分、1,2、4,6及び24時間ごとに目視観察と写真撮影とを行い、その形状から「スレーキング区分図」に従って、スレーキング区分を判定します。
  • g)水浸24時間経過後及び炉乾燥後の供試体の質量測定を実施します。
  • h)排水及び水切り後の供試体質量測定:水切りした供試体を試験容器に入れたまま全質量m3を測定し、さらに、その供試体を(110±5)℃で質量が一定になるまで炉乾燥して、試験容器ごと全質量m4を測定します。
  • i)スレーキング状況の観察によって判定したスレーキング区分と時間との関係を求めます。
  • j)スレーキング指数の決定:供試体の水浸24時間経過後のスレーキング区分を「スレーキング指数」とします。
  • k) 各段階における含水比の算出:以下の各段階における供試体の含水比を算出します。
    1:初期の含水比の算出(ω1(%))
     ω=【(m1ーm4)/(m4ーm0)】×100(%)
    m1:初期の供試体+試験容器の全質量(g)、m0:試験容器の質量(g)
      m4:110℃±5℃で質量が一定となった炉乾燥後の容器と試料との全質量(g)
    2:水浸前の含水比(ω2(%))
     ω=【(m2ーm4)/(m4ーm0)】×100(%)
    3:水浸24時間経過後の含水比(ω3(%))
     ω3=【(m3ーm4)/(m4ーm0)】×100(%)
      m2:風乾後、40±5℃乾燥後の供試体(試験容器ごと)の質量(g)
      m3:水切りした供試体の容器ごとの全質量(g)

図-1 スレーキング区分(★<sub>4</sub>)
図-1 スレーキング区分(★4

図-2 スレーキング指数と時間曲線

図-3 椎谷層スレーキング指数と時間曲線(★4

では、次に、私から「岩石の促進スレーキング試験方法(JGS2125-2020 )(★4)について簡単に説明しますね。
❶適用範囲:この基準は、岩石のスレーキング指数、及び「乾燥・水浸の繰返し」によって「スレーキングを促進させる時のスレーキング区分の変化」を求めるのが目的です。
❷試験の準備、供試体の形状寸法、供試体作製、質量測定等は「岩石のスレーキング試験方法」と同様です。
❸試験方法:乾燥・水浸は、3回の繰返しとします。結果は、促進スレーキング試験でのスレーキング区分と時間関係(1回目、2回目、3回目)を求め、繰返しによるスレーキング区分の変化を検討することになります。

課長! よくわからないのですが、なぜ繰返し試験が必要なのでしょうか!しかも3回も。促進スレーキング試験の意味が分かりにくいのですけど!!

そうですね。わかりにくいかも知れませんね。促進スレーキングは、盛土材や侵食防止剤などのように常に乾湿の繰返しを受け、長期にわたる耐久性を必要とするような場合、または、直射日光や風雨の影響を大きく受ける場合などを考慮して基準化されたようですね。一方、1回の乾湿でのスレーキング試験では、膨潤性粘土鉱物であるスメクタイト族(特にNa型のモンモリロナイトを含む場合)を含む軟岩や、掘削により急激な「応力解放」を伴うような軟岩材料を土工材料として使用する場合や切土などの施工場面での吸水膨張による強度低下などの現象を想定しているように推測されます。

課長!!少しわかったような感じがします。とりあえずですが!!今度、両方の試験をやらせて頂いてから、色々質問しますからね! 山王係長!よろしくお願いします!

今日、私は沢山説明したので、少し疲れました! I worked all day today, I‘m exhausted.
なんと、「岩石のスレーキング試験」では、膨張性粘土鉱物の種類によって膨張度合いが異なるようで、おそらく、交換性陽イオンが大きく影響を与えていますね! Yes, the time has come! It‘s finally my turn. Let’s do our best next time!

引用または参考文献等
(1) 鍋立山トンネル:西松建設(株)
(2) 田中和弘・石原朋和:鍋立山トンネル周辺の泥火山の活動と膨張性地山の成因,地学雑誌,Journal of Geography ,118(3),2009.
(3) 泥岩地山のスレーキング:産総研,地質調査総合センター「絵で見る地球科学」.
(4) 「岩石のスレーキング試験方法(JGS-2124-2020 )」,「岩石の促進スレーキング試験方法(JGS-2125 -2020)」,地盤材料試験の方法と解説,地盤工学会.
(5) モンモリロナイトを含む第三紀層泥岩のスレーキング現象:中国地質調査業協会資料.など 

以上

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