関東土質試験協同組合
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第6回目
「関東の地盤を知ろう!」

総務係長「土橋」

皆さん‼ 久しぶりですね。土橋です。今回は、「関東地方の土質」第6回目(「相模層群・逗子層群・三浦層群」)について紹介します。本日は、特に、青首大根の産地である、三浦半島が大きくかかわる内容ですよ。楽しみにしてくださいね。
では、・・・

土質試験課の羽田課長さん

今回の話題は、神奈川県南東部の「三浦半島」に着目したいと考えます。三浦半島と言えば、城ヶ島が有名ですね。半島南端にある自然島で、周囲長約4㎞、面積が約0.99km2、東西幅約1.8㎞、南北幅約0.6㎞と東西に細長い地形になっているね。品川から京浜急行電鉄で終点の「三崎口駅」までいき、城ヶ島行きバスで約20分、「白秋碑前」で下車すれば「城ヶ島公園」につきます。ここで、関東さんに質問です。この「白秋碑」とはなんでしょうか?

新入社員の関東真理子さん

はい、わかりました。簡単です。大正時代の歌人で北原白秋が「城ヶ島の雨」を詠ったことを称えた碑のことです。歌詞は多少覚えています。いいですか。

雨はふるふる 城ヶ島の磯に 利休鼠の雨がふる
 雨は真珠か  夜明けの霧か それともわたしの忍び泣き
 ・・・・・  ・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・

このような歌詞だったと思います!! 私には歌詞の内容は説明できない「大人の歌」ですけど。ちなみに、「利休鼠(りきゅうねず)」とは、千利休が好んだとされる「緑色がかった灰色」のことで、総じて「暗い緑に灰色をまぶした雨」を指しているみたい!
 私たちが土質試験で良く使うシルトの色調は、「暗灰色」って表現が多いけどなー。

大森係長

さすがですね。関東さん。それでは、私が三浦半島の大まかな地質を紹介します。太田岳洋(文献1)によれば、「三浦半島は地形・地質的に大きく北部、中部、南部にわけられ、北部は開析の進んだ丘陵地形を呈し、主に三浦層群の逗子層、池子層、上総層群の野島層が分布する。中部は、大楠山(標高241.3m)を最高点とする山地地形を呈し、その中央部には三浦層群逗子層が分布し、その南北に北武断層、衣笠断層を境として葉山層群が分布する。南部は開析の進んだ丘陵地形を呈し、武山断層と南下断層とによって形成された地溝帯は標高60m前後の台形地形を呈し、主に相模層群宮田層が分布している。また南下断層以南には主に三浦層群三崎層、初声(はつせ)層が広く分布する」と三浦半島の地形・地質を紹介しています。なお、図-1には、政府の地震調査研究推進本部による三浦半島の地質図(文献2)を掲載しています。
 三浦半島では、多くの活断層群が認められ、「三浦半島断層群」と呼ばれています。政府の地震本部資料(三浦半島断層群:文献2)によれば、「この断層群は、三浦半島の中部・南部及びその周辺海域に発達する活断層群で、断層群の主部は、ほぼ西北西~東南東方向に並走する北側の「衣笠・北武断層帯」と南側の「武山断層帯」に二分され、衣笠・北武断層帯の最新活動時期は、6~7世紀、平均的な活動間隔は、概ね、1,900年~4,900年程度である。」とされているようです。
 一方、「武山断層帯の最新活動時期としては、概ね、2,300年前~1,900年前以前であり、平均活動間隔は、1,600年~1,900年」とされています。また、1923年の関東大震災では、陸域部の東端付近では地震断層により、1.5mほど地盤が隆起したようです。

図-1 三浦半島断層帯の分布状況(文献2:地震調査研究推進本部の断層帯地図から)
図-1 三浦半島断層帯の分布状況(文献2:地震調査研究推進本部の断層帯地図から)

新入社員の関東真理子さん

皆さん!難しい話題はこの辺にしましょう!三浦半島の名産はなんでしょうか!
そうです、「ダイコン」です。

土質試験課の羽田課長さん

関東さんよく知っているね。三浦半島の野菜栽培は、「ホウレンソウ」から始まったのは知らないでしょ!! 斎藤功他(文献3)によれば、日露戦争後、横須賀を中心とする旧帝国海軍がビタミン補給に良いとして、「ホウレンソウ」を奨励したことから始まったようで、当時「横須賀ホウレンソウ」として納入されていたとされていますね。その後、明治後期には「高円坊」と呼ばれていたダイコンと、練馬ダイコンを何回も自然交雑させ、三浦半島の風土と合ったものを選抜したのが「三浦(半島で栽培される青首)ダイコン」で、1925年三浦郡農会技師であった岸亀蔵の命名によると言われているよ。また、三浦の三大特産物と言われていた野菜類では、「オンバイモ(馬鈴薯)」が挙げられます。つまり、ダイコン・ホウレンソウ・オンバイモが三大特産物だったようですが、最近は、キャベツやスイカも有名ですけど。関東さん! さすがに知らなかったでしょう!!

大森係長

それでは、本題に戻しましょう。まず、三浦半島の新第三系・第四系の層序表は、文献1に記載されている、5万分の1地質図幅「横須賀地域の地質」の簡略版である表を表-1 として示し,同じく文献1の三浦半島の地質概略図を図-2として掲載しています。これらの層序表から、三浦半島北部域では、下位から三浦層群逗子層、池子層と上総層群の野島層が主に分布しています。中部域においては、下位から葉山層群、三浦層群逗子層、相模層群などが、また、南部域では、主に三浦層群三崎層、初声(はつせ)層が分布しているようですね。なお、相模層群は、今から50万年前~8万年前の地層で、細礫・砂・シルト・火山灰などから構成されています。代表的な模式地は、戸塚~大船あたりと言われています。
 太田岳洋(文献1)は、三浦半島全域について、「国土地理院発行の数値地図50メッシュ(標高)(通称:50m-DEM)」による自然災害の危険性評価(斜面崩壊)を検討していますね。その検討結果では、斜面の崩壊発生率(各地層の分布メッシュ数に対する崩壊箇所の分布メッシュ数)は、「逗子層で最も大きく、ついで野島層、池子層、葉山層群の順となること。半島南部に分布する三崎層や初声(はつせ)層及び相模層群は崩壊発生率が小さい」と述べています。ただし、50m-DEMを用いた地形計測から個々の斜面の崩壊に関する危険性を評価することが困難であるとも指摘しているけどね。

新入社員の関東真理子さん

大森係長! それでは、北部域や中部域が斜面崩壊が多いと考えていいみたいですね。だって、逗子層や野島層(北部域)、池子層が分布しているのは、北部と中部域で、南部は三崎層と初声層ですから。それに、城ヶ崎は比較的平坦な地形だったと思いますけれど!!
 ここで、土木工学上問題となる「地層」は、「三浦層群逗子層、池子層」と「上総層群野島層」あたりですね。特に、三浦層群逗子層や葉山層群などは要注意ですね!!

大森係長

そうだね! 関東さん。それでは、城ヶ島は三浦層群が分布していると想定されるけれど、何か地層がわかる写真などは見つからない!!そうだね、城ヶ島海岸あたりで何かいい写真はないのかな? どう!

新入社員の関東真理子さん

わかりました。この間、私の友達が「城ヶ島」に遊びにいったので、なにか良い写真を送ってもらいます。友人はもちろん女の子ですからね!

大森係長

関東さん。それはいいな。できれば、「馬の背洞門」などがあれば最高だね。!!
 関東さん! 「馬の背洞門」について聞いたことある?「馬の背洞門」は、城ヶ島のパワースポットになっていて、波によって浸食された海蝕洞で、大変人気がある場所です。この洞門は「初声(はつせ)層」の凝灰岩、凝灰質砂礫岩からなっています。洞門のそばまで近づけますが、洞門の上は崩落の恐れがあるので、「通行禁止」ですからね!!
 なお、写真-1 には「馬の背洞門」を、写真-2 は、洞門の遠景を示しています。関東さん写真送ってもらってありがとう。たすかりました!この他にも、波食台や海食崖、海外町の県指定天然記念物であるスランプ構造や二町谷の漣痕の露頭など当時の堆積環境を知ることができる素晴らしいジオサイトが観察できますよ。関東さんも見学してきてね。

表-1 三浦半島の地質層序(文献1より)
表-1 三浦半島の地質層序(文献1より)

図-2 三浦半島の地質概要(文献1より)
図-2 三浦半島の地質概要(文献1より)

土質試験課の羽田課長さん

それでは、大森係長! 三浦層群や相模層群の物性値は見つかりましたか?

大森係長

そうですね。ほとんどないですね。井波和夫他(文献4)には、地表から採取した逗子層の泥岩(一部池子層)について、角柱供試体による一軸圧縮強度や密度、孔隙率などを求め、試料採取地点の層準とその位置関係を、矢崎・三梨(1962)の層序断面に投影させた「層序的な深度」との関係を論じています。これによると、池子層(馬堀地区)の火砕質砂質泥岩では、2,724kN/m2~35,960kN/m2(平均3,155kN/m2)、逗子層の大仏切通し付近では4,684kN/m2~8,388kN/m2(平均6,752kN/m2)、浦賀では7,840kN/m2~13,935kN/m2(平均11,564kN/m2)、太郎崎では13,171kN/m2~15,356kN/㎡(平均13,916kN/m2)、北武7,947kN/m2~23,520kN/m2(平均15,680kN/m2)とかなりの強度幅が生じていますが、「層序的な深度」と強度との関係では明らかに「深度依存性」が発現しています。また、孔隙率は40~50%と一部を除き、深度依存性(下位に向けて孔隙率が少なくなる傾向)が認めれています。細野(文献5)の上総層群(柿の木台~黒滝層)の圧縮強度21㎏/㎠~126㎏/cm2(2,058kN/m2~12,348kN/m2)と比較すると、明らかに三浦層群は高強度であり、堆積年代の違いによる固結度の差異が認められますね。

写真-1 馬の背洞門(関東さんの友人より)
写真-1 馬の背洞門(関東さんの友人より)

写真-2洞門の遠景(関東さんの友人より)
写真-2洞門の遠景(関東さんの友人より)

★参考及び引用させていただいた主な文献など

  1. 1) 太田岳洋:「数値地図50メッシュ(標高)による三浦半島における斜面崩壊地の地形的特徴に関する検討」-50m-DEMによる自然災害評価の限界と期待―,応用地質,第46巻,第6号,2006.
  2. 2) 三浦半島断層群(地震調査研究推進本部).
  3. 3) 斎藤功・渋沢文雄・池田一雄:「三浦半島における野菜生産の発展と農業経営」,筑波大学人文地理学研究,9巻,1985.
  4. 4) 井波和夫・垣見俊弘:「地表試料による泥岩強度と地質構造の相関例(予報),地質調査所月報,第19巻,第1号.
  5. 5) 細野高康・小泉和広・杉田信隆・小川正二「上総層群の高圧圧密特性」,応用地質,34巻,第5号,1993.
総務係長「土橋」

土橋です。第6回の話題提供はいかがでしたか? 城ヶ島に関する話題が楽しかったですね。なお、三崎町諸磯の諸磯隆起海岸は、地震の痕跡を残す海岸として、1928年9月に国指定天然記念物に指定されました。皆様、是非見学してみて下さいね。さて、第7回は、関東地方の土質「河川周辺低地に分布する泥炭」についての話題提供となります。

以上

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