関東土質試験協同組合
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第2回目
「関東の地盤を知ろう!」改訂版

総務係長「土橋」

皆さん‼久しぶりですね。土橋です。今日は、「関東地方の土質」第2回目(東京湾周辺の土質:「七号地層」)について紹介します。本日は、羽田課長、マリコさん、空君が登場します。

新入社員の関東真理子さん

羽田課長! お願いがあります。今、土質試験の依頼の電話があり、ついでに「七号地層」について聞かれたのですけど、「よくわからないので後で上司と相談してこちらから改めてお知らせいたします。」って答えて電話を掛けなおすことにしたのですが?私に「七号地層」って何かを教えてもらえませんか‼‼

土質試験課の羽田課長さん

わかりました。関東さん。先日の「東京湾周辺の土質」で出てきた軟弱層の「有楽町層」はなんとなくわかったよね?「七号地層」については、研究者によって色々意見が分かれるみたいだけど。まず、工学的区分として、「七号地層」はこの「沖積層」のなかに含まれるのかな?どうだろう?なお、ここでは、慣例的に「沖積層」の表現を使用しますね。

古東京湾5)
古東京湾5)

「沖積層の形成」については、田部晋(文献1)らによれば、【「東京低地は、東に下総台地、西に武蔵野台地、北に大宮台地、中川低地は東に下総台地、西に大宮台地に接した沿岸河川低地であり、主に近世の東遷(文禄3年から始まる利根川を東に移す、60年を要した大河川工事)以前の利根川によって形成されてきた。(貝塚、1979)」としており、さらに、この地域の地下には、最終氷期最盛期にかけて形成された「開析谷(かいせきこく)」が標高-70mにかけて分布していて、現在の中川沿いに分布する中川開析谷と荒川沿いに分布する荒川開析谷は、東京低地の北部で合流し、東京川開析谷となって、東京湾口に流下し、主に利根川からの供給土砂によって開析谷が充填された。また 、これらの開析谷の充填堆積物は、「沖積層」と称されている。】としていて、古東京川の堆積物が沖積層(供給源は主に利根川の土砂?)と呼ばれるようになったみたいだよ。そこで問題となるのは、何かな?  マリコさん!

新入社員の関東真理子さん

羽田課長‼ 女性職員を「下の名前で呼ぶ」のは、ちょっとまずいですよ。ハラスメントになる可能性があります。だめですよ‼ 関東でいいですからね。そうですね。供給源の同一性と堆積環境や年代の近似性ですか?

土質試験課の羽田課長さん

関東さん、ごめん、ごめん。親しみを込めて言わせてもらったけどまずかったね。今後、気を付けるからね。
 そうだね。清水惠助他(文献2)の論文では、佐賀平野・大阪湾・濃尾平野・関東平野(東京臨海部)新潟平野の各地区における沖積層の研究を横断的にまとめて比較分析をしているけど、それらの比較研究(層序・層々・C14年代測定など)から、沖積層の下部(基底)は、約2万年前を示していること、沖積層の堆積過程は、縄文海進の海水変動と供給源の水系の堆積物供給量に支配されることなど色々な知見が得られたとされているね。そこで、清水らの研究で示された比較対比表について、関東平野の例を抜き出して表-1にまとめたので参考にしてみてよ‼

新入社員の関東真理子さん

羽田課長! この表でみると、七号地層は沖積層なのですね。しかも、有楽町層は海成(汽水~海成)堆積物で、七号地層は「非海成(淡水)」堆積物と違いがあるのですね。おもしろいです! 七号地層の特徴はどうでしょうか?

土質試験課の羽田課長さん

そうそう、石綿しげ子(文献3)によれば、「七号地層は、基底に砂礫層があり、シルト層を優勢とする「砂泥互層」で、一部に層厚5m以上の砂層を塊状に分布、軽石、礫を混入し、下総層群と類似している。」とその特徴を記載しているよ。
また、N値では、粘性土でN値=5~15程度、砂質土では、N値=30以上、砂礫ではN値>50としているね。
 さらに、東京都土木部技術研究所(1969)と遠藤他(1984)、東京港地盤図(2001)では、七号地層は、一体としており、東京港地盤図(1972)・清水惠助(1984)では、七号地層は上部層(Nau)と下部層(Nal)とに細分しているよ。それぞれ研究機関や研究者によって見解が異なるみたいだね。本当に難しいな‼

表-1 有楽町層と七号地層との工学的区分(清水惠助ら1995から抜粋)

表-1 有楽町層と七号地層との工学的区分(清水惠助ら1995から抜粋)

新入社員の関東真理子さん

清水惠助他(文献2)では、関東以外の沖積平野についてもそれぞれ特徴を対比研究しているみたいですけど、関東平野に分布している七号地層相当層については、他の沖積平野でも対比できるのでしょうか?

土質試験課の羽田課長さん

面白いね。関東平野で分布している「七号地層」相当層は、清水惠助他(文献2)によれば、大阪平野~大阪湾にかけた沖積層の層序として、完新統(1万年前)では、「梅田層と南港層」とに2分され、1万年前~2万年前を示す「七号地層相当層」は欠如しているらしいよ‼佐賀平野や濃尾平野などでは、七号地層に相当する地層が認められているようだよ。それでは、七号地層の物性などわかるかな?関東さん調べてみて!

新入社員の関東真理子さん

承知いたしました。羽田課長。石綿しげ子(文献3)の論文には、有楽町層と対比して、七号地層のN値や色調、含有物などがまとめられています。表-2に石綿しげ子(文献3)のデータを抜き出し、私が新たにレイアウトした対比表を掲載します。

表-2 有楽町層と七号地層とのボーリング試料によるN値・色調・含有物対比
(石綿しげ子(文献3)の東京湾北部沿岸域の沖積層と堆積環境のpp.300表-2から抽出改表)

表-2 有楽町層と七号地層とのボーリング試料によるN値・色調・含有物対比(石綿しげ子(文献3)の東京湾北部沿岸域の沖積層と堆積環境のpp.300表-2から抽出改表)

土質試験課の羽田課長さん

明らかに、七号地層の方が「N値が大きい」のがわかるね。また、含有物からも有楽町層が「貝殻片を多く含みの表現」から海成堆積物で、七号地層は「腐植土を薄層状に含むの表現」他、貝殻片も含まれてはいるけど、「淡水領域の堆積物」であることが想像されるね。関東さん! 七号地層の強度や圧密降伏応力(Pc)などの地盤の強度を推定する物性値はなにかわからない?

新入社員の関東真理子さん

一軸圧縮強さ(qu)単独のデータは、なかなか見つかりません。一部、遠藤毅・中村正明らによる論文では、「沖積(有楽町+七号地層)」として、間隙比(e)と一軸圧縮強さ(qu)との相関で表されています。間隙比は、e=1.0~2.7程度で、qu≒0.50~2.4×102kN/m2程度となっているようです。おそらく、低いquは有楽町層の値ではないでしょうか?また、圧密降伏応力(Pc)も同様ですが、七号地層では、私の工学的な勘では、少なくても4.0×102kN/m2程度以上は見積もれると思います。

土質試験課の羽田課長さん

そうですか。工学的な勘で判断するのは、まだまだ無理があるよ。しかし、なかなか単独のデータは公表されていないようだね。厳しいね。ますます、各層のデータを吟味・整理して「意思を持ってデータベース化」する必要がありそうですね。使えるデータが極めて乏しいことが分かりました

南大田小3年の空君

こんにちは‼空です。課長さん少し教えて貰えない?僕さっぱりなんだ。班ごとに「液状化について」まとめて発表することになったんで~す(やや投げやり)。小学校低学年には難しすぎるテーマだよ‼わかるわけないよ。

新入社員の関東真理子さん

空君久ぶりねー。相当に難しい課題ね。先生(空君の担任は「港先生」です)は、いつもこんな感じで無茶ぶりするの?空君の班には、小海ちゃん(空君の同級生でしかも、なんと、空君の彼女さんみたいです。組合の皆はそう思っています。)もいるの?

南大田小3年の空君

4班に分かれて、一班は6名だから。もちろん、僕の班にいるよ‼先生はいつもだいたいこんな調子だよ。多分、みんなが困る顔をしげしげと眺めて、楽しんでいるみたいだよ。いやな性格だよ(実際は大分相違があるみたいですよ!空君)。

新入社員の関東真理子さん

大森係長! 空君の件どうします。4班あるから、発表内容はダブル可能性がありそうですけど。私たちができるのは、試験・解析が主ですけど。実際の試料を採取して試験するなんていいかもね♬。

南大田小3年の空君

マリコおねえさん‼ 今度、液状化について僕に「わかりやすく教えて」、できれば簡単な方法でいいから。一応、お父さんにも聞いてみるから、多分、「よくわからないぞ」と言うのはわかっているけどね。

総務係長「土橋」

今回は、東京湾周辺地域における沖積層として、色々質疑のある「七号地層」についての話題提供となりました。また、大森係長がいよいよ登場しそうです。空君の宿題はどうなるのでしょうか。お父さんに聞いて無事解決するのでしょうか?次回は「東京層群(東京層・東京礫層)」についてお話します。勿論、空君のお話も・・・

★参考及び引用させていただいた主な文献など

  1. 1) 田部晋・石原与三郎・中西利典:「東京低地から中川低地にかけた沖積層の層序と物性:沖積層の2部層区分に」,地質学雑誌,第116巻,第8号,pp.85~98,2010.
  2. 2) 清水惠助・小松幹雄・菅野耕三・下山正一:「沖積層の層序」,土と基礎,43-10,1995.
  3. 3) 石綿しげ子:「東京湾北部沿岸域の沖積層と堆積環境」,第四紀研究,43(4),pp.297~310,Aug, 2004.
  4. 4) 遠藤毅・中村正明:「東京都区部の深部地盤構造とシルト層の土質特性」,土木学会論文集,No.652,Ⅲ-51,pp.185~194,2000.
  5. 5) 江坂輝弥:「縄文時代の考古学―シンポジウム(1972)」

以上

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