関東土質試験協同組合
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第3回目岩石試験を知ろう! 岩石の物理試験



やる気一杯
関東主任

皆さん!!お久しぶりです!! 「関東の地盤を知ろう!」では大変お世話になった関東です。この度、私も尊敬する「六郷課長」から「岩石試験を知ろう!」第三回「岩石の物理試験」の紹介を依頼されました。私もやっと土質試験課主任に昇格したばかりです。この企画は、大変興味があります。だって、「山王係長」もほとんどメインキャストだって 聞いたから! では、六郷課長!! 「岩石の物理試験」に関する解説をお願い致します。 それから、山王係長もよろしくお願いします!

では、「岩石の物理試験」について説明します。岩石の物理試験は、軟岩から硬岩までの多様な性状を示す岩石について実施される基本的で重要な試験となっているのはわかります?その割に、試験条件や試験法があまり明確化されておらず、各機関で様々な基準が出されていて、現状、ISRM指針、土木学会岩盤力学委員会「軟岩の調査・試験の指針(案)」、建設省「土木試験基準(案)」、日本鉄道建設公団「地質調査標準示方書」など多くの基準類が存在しています。しかし、このたび、地盤工学会基準として、「岩石の密度試験方法(JGS-2132-2020)」及び「岩石の含水比試験方法(JGS-2134 -2020 )」が基準化されたのは、蒲田さんも知っているよね。これらの基準にない有効間隙率や吸水率などは、統一されていないため、状況に応じて基準を選択するなど皆さん苦労しているようだよ。
 では、山王係長!「岩石の密度試験方法」について簡単に説明してね!

では、私が「岩石の密度試験方法(JGS-2132-2020 )」(★1)について説明しますね。
❶適用範囲:この基準は、成形あるいは非成形の岩石及び岩石質地盤材料の供試体として、「かさ密度」を求める試験に適用することになります。ここで、「かさ密度」とは、皆さん聞きなれない用語ですよね。「かさ密度」とは、任意の含水状態における供試体の質量を、固相・液相・気相部分の全てを含んだ体積で除した供試体の密度のことです。
❷試験方法:試験方法は、ノギス法と浮力法との2種類があります。ノギス法は成形した供試体に対応し、浮力法は非整形の岩塊に対応しています。なお、多孔質な供試体や浸水すると体積が変化するような供試体、又は、崩壊してしまうような供試体などに対しては、JIS-A-1225・ JGS-0191 (土の湿潤密度試験方法)に記載されている「パラフイン法(パラフイン塗布による浮力法)」などが有効となりますね。
❸かさ密度の算出:ノギス法では、供試体の寸法を測定後、体積V(mm3)を算出し、供試体の質量m(g)を測定してから供試体のかさ密度を算出します。

(直円柱の場合の体積)
V=(π/4)D2H(mm3)
D:供試体の平均直径(mm)
H:供試体の平均高さ(mm)
(直方体の場合の体積)
V=A・B・H(mm3)
A:供試体の縦の平均長さ(mm)
B:供試体の横の平均長さ(mm)
供試体のかさ密度(ρ)=(m/V)×1000(Mg/m3

次に、浮力法の場合について説明しますね。浮力法では図-1に示す様な水中で見掛けの質量が測定できるような測定器具が必要となります。最初に岩塊の供試体の質量(m)を測定しておきますからね。 Miss Kamata !! Bear in mind what I said.
a) 次に、水で満たした水槽に24時間以上放置して供試体を吸水させます。吸水させた供試体を水中に入れて、表面の気泡を除去してから水中での見掛けの質量m(g)と水温t(℃)とを測定します。
b) 供試体を水中からだし、表面に付着する水滴を手早くふき取り、飽和状態の空中質量m2(g)を測定して、次式で体積を計算し、「かさ密度」を算出します。なお、ρは水の密度(Mg/m)です。
c) V=【(m2-m)/ρ】×1000 を求めてからρ=m/V式に代入して「かさ密度」を計算します。  

図-1 水中における見掛けの質量の測定方法の例
図-1 水中における見掛けの質量の測定方法の例

山王係長!やり方はわかりましたけれど。 何でこんな浸水作業を行うのですか!!浮力法って「いわゆるアルキメデスの法則」を利用することですよねー。

蒲田さん!おっしゃる通りよ。この方法では、飽和状態の供試体の空中質量と水中の見掛けの質量との差から供試体の体積を求めることが目的です。また、必要に応じて、それぞれの含水状態のかさ密度としては、湿潤密度(ρt)、乾燥密度(ρd)、飽和密度(ρsat)なども求めることができますよ。では、六郷課長!出番です! 岩石の密度の利用法としてはどんな分野で利用されていますかー。How frustrating!

そうですね。山王係長! 岩石物性値データベース(PROCK)って聞いたことある?
 日本の岩石(7,873個)について文献や資料から岩石の密度、P波速度、有効間隙率、熱伝導率について統一的に数値化・編集し、岩石物性値データベースとして公開されています。岩石物性は、岩石の地質学的な属性と物理的な属性とを結びつけるもので、地下の物理構造を地質学的に解釈するには不可欠なデータ群ですね。通常、よく使われるのは、斜面安定解析や土圧の計算、構造物基礎の設計用、あるいはトンネルの地山強度比の算出や地下空洞の土圧計算などに使われていると思うけど。
 さらに、石材や材料としての適性を知るための規格としては、「石材」JIS-A-5003-1995(★) があります。これは、土木、建築に使用する天然産の石材に係る規定で、見掛け比重、吸水率、圧縮強さについて規定しており、表-1 には、石材区分を示しています。

表-1 石材の区分(JIS-A-5003★)
表-1 石材の区分(JIS-A-5003★<sub>2</sub>)

また、コンクリート用骨材としての規格は、「粗骨材の密度及び吸水率試験方法(JIS-A-1110-2020)」(★)があげられます。骨材や砂利などに使用するには、絶乾比重2.5以上、吸水率3.0%以下が閾値みたいだよ。表-2 には、各種代表的な岩石の密度についてまとめています。なお、今あまり使われない半深成岩についても記載がありますね。

表-2 代表的な岩石の密度一覧(★
表-2 代表的な岩石の密度一覧(★<sub>1</sub>)

次は、「岩石の含水比試験方法(JGS-2134-2020)」(★)に関する内容ですよ。
❶適用範囲:この規格の適用としては、恒温乾燥炉を用いて岩石の含水比を求める試験方法で、岩石及び岩石質地盤材料を対象としています。
❷定義:「岩石の含水比」とは、(110±5)℃の炉乾燥によって失われる試料中の水の質量の、岩石の炉乾燥質量に対する比を百分率で表したものです。
❸試料:試料の形状は任意で、必要な質量の目安は20~100g程度とし、軟質な試料では供試体の成形時の削りカスを利用することもできますね。
❹試験方法:使用する容器の質量m(g)を測定し、次に、容器に試料を入れた全体の質量maを求め、容器ごと(110±5)℃の恒温乾燥炉に入れて「一定質量になるまで」炉乾燥を行います。この「一定質量になるまで」の時間は、供試体の大きさ、形状、岩石の種類、含有水分量などで異なるけれど、通常では、24時間程度が目安と言われているね。
❺計算方法:岩石の含水比ω(%)は、次式で求めます。
   ω=[(ma―mb)/(mbmc)]×100(%)
   ここに、ma:試料と容器との質量(g)、mb: 炉乾燥後の試料と容器との質量(g)
       mc:容器の質量(g)

表-3 代表的な岩石の含水比例(★4
表-3 代表的な岩石の含水比例(★<sub>4</sub>)

六郷課長!! 密度や含水比の他に、確か吸水率や有効間隙率などもありましたよ!これらの数値はどうやって求めるのですか!!
そうだ!山王係長わかります!!

そうですね! 「ISRM指針」や建設省「土木試験基準(案)」、などでこれらの指標値の算出式が出されていましたね。
ここでは、建設省「土木試験基準(案)(KDK-S-0501-1968)」(★)に記載されている有効間隙率と吸水率とについて紹介しますね。
 ❶まず、自然状態の試料の空中質量(W)(g)を測定します。
 ❷次に、試料を3日間程度水浸させ、試料の強制湿潤状態の水中質量(W)(g)と、強制湿潤状態の空中質量(W)(g)とを測定します。
 ❸❷の試料を炉乾燥に入れ、110℃で24時間乾燥させて、乾燥後、試料の温度が室温まで下がってから強制乾燥状態の空中質量(W)(g)を測定し、下式で有効間隙率及び吸水率を算出します。

★★:有効間隙率=[(W3―W2)/(W3―W4)]×100(%)
吸水率=[(W3-W2)/W2]×100(%)

山王係長!お疲れ様! 岩石の有効間隙率測定については、試料の飽和状態と乾燥状態との重量差で測定するのが一般的ですが、「試料を飽和させる方法」や「乾燥させる方法」が現行の各試験基準で統一されていないため、有効間隙率の測定結果に及ぼす「飽和方法」や「乾燥方法」の影響を検討しておくべきです。これらに関する基礎的な研究例としては、林為人他(★)や同じく林為人他(★7)などの研究例があります。
例えば、林為人他(★)の研究例では、有効間隙率が1%~55%の範囲にある稲田花崗岩、多胡砂岩、田下凝灰岩、上総層泥岩など8種類の岩石を研究用試料として、3種類の脱気方法(大気圧下の「浸水法」、試料を浸水させてから真空脱気させる「浸水脱気法」、試料を真空脱気させてから浸水させる「脱気浸水法」)による飽和状態の度合いや乾燥条件について詳細に検討していて、結果は、以下の内容となっていますよ。
 ❶真空脱気を行う「浸水脱気法」と「脱気浸水法」とは、大気圧下の「浸水法」よりも「飽和促進効果が大きい」ことが確認された。
 ❷飽和に要する時間は、「脱気浸水法」が最も短いこと。浸水脱気法では、花崗岩や凝灰岩の大きさ5cmの試料を完全に飽和させるのに、10数日要するなどが判明した。
 ❸80~210℃の範囲の乾燥温度が有効間隙率の測定結果に及ぼす影響は、試料の膨潤性粘土鉱物の有無と関係しており、膨潤性粘土鉱物が存在しない場合には、乾燥温度の影響は認められず、80℃で充分試料が乾燥できるが、膨潤性粘土鉱物を含有する場合には、有効間隙率の測定結果にその影響を受けることが確認されたようです。
 また、有効間隙率は他の物性との相関性も研究されていて、例えば、藤井誠他(★)では、岩石供試体の飽和状態の比抵抗(飽和比抵抗と呼ぶ)と有効間隙率とには密接な関係が認められおり、有効間隙率が大きい供試体では、飽和比抵抗が小さく、有効間隙率が小さい供試体は、飽和比抵抗が大きい関係にあり、飽和比抵抗を岩種別に見ると、花崗岩が最も大きく、砂岩、流紋岩、頁岩、変質岩の順に小さくなるようだと報告しているね。

六郷課長!山王係長!!有効間隙率試験方法については必ずしも完璧ではないみたい。まだまだ改善点が残っているみたいで色々勉強しないとダメですね!!

<引用・参考文献など>
(1)岩石の密度試験方法(JGS-2132 -2020):地盤材料試験の方法と解説,地盤工学会.
(2)「石材」:(JIS-A-5003-1995),日本産業規格.
(3)粗骨材の密度及び吸水率試験方法(JIS-A-1110 -2020 ),日本産業規格.
(4)岩石の含水比試験方法(JGS-2134-2020 ):地盤材料試験の方法と解説,地盤工学会.
(5)「土木試験基準(案)」(KDK-S-0501-1968 ):建設省土木研究所.
(6)林為人・西田薫・杉田信隆・高橋学:「岩石の有効間隙率測定における試料の飽和および乾燥方法」,土と基礎,48-11(514),2000,土質工学会.
(7)林為人・荒川哲一・杉田信隆・友田雅展・高橋学:「岩石の有効間隙率測定における試料の飽和方法について」,応用地質、第36巻、4号、1995.日本応用地質学会.
(8)藤井誠・西田薫・石黒幸文・雷興林・西野健三:「岩石の比抵抗特性と地質要因に関する室内試験と考察」,土木学会論文集,No.652 /Ⅲ-51,2000,土木学会.

以上

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